文化

気持ちが柔らぐ自然からの色を感じて 画家・染色家 林 節子さん

かやぶきの館敷地内よりあい工房にて開催されている「草木染め体験教室」工房の中は、石灰、ミョウバン、 鉄などが並び、そこはまるで理科室のよう。画家であり染色家でもある林節子さんにお話を伺います。

川島もとより、辰野は染色の材料の宝庫です

本日はよろしくお願いします 「あかねの会」はいつから始まりましたか(伊藤)

かやぶきの館が始まる前から、4名くらいで北大出で活動していましたね。平成2〜3年頃からでしょうか。当時、地区で集まれば「嫁姑」の話題ばかり。もっと他に地域を活性化できるものはないかと考えていた時に「草木染め」はどうかと提案したのがキッカケです。私は北大出に住んでいますが、ここはリンゴや梨などの果物の産地。植物を燃やして炭にして釉薬を作りたいと思っていました。その時、北大出で困っていたのが「日本あかね」花が咲き、実がなり、増えてツルが伸びて増えて、果樹園の木に巻きついて農家の方は困っていました。根を伐採してコンテナ6箱にもなりましたよ。農家の方はもちろん自治体の担当者も大喜びでした。あかねは貴重で輸入でしか手に入らないのに、日本あかねが自生しているんですから。「あかねの会」の名前はここから。辰野町役場の方に声をかけていただいて、よりあい工房で草木染めを始めました。ありがたいことに、川島もとより辰野町には様々な植物があり、これを材料にしてみよう、次はこれを…。とだんだん忙しくなり今に至ります。(笑)

草木染め(くさきぞめ)とは
草木染めとは、化学(合成)染料を使用する染色方法に対して、果実や植物などの自然由来の染料を使った染め方のことを指します。

あかねの根

絵を描きはじめた当時、色は買うものだと思っていた

染色の見本帳などはありますか(伊藤)

昔は細かく作っていましたが最近はなかなか。同じ植物でも春夏秋冬で色合いが変わります。辰野美術館にあるんじゃないかしら。今までありとあらゆる植物を染めましたが、トマトの実だけは、いくらやってみても全く色が出ませんでした。

そうなんですか?真っ赤に染まりそうですが意外ですね(山崎)

これだけは本当に不思議です。私は学生時代から油絵を描いています。もちろん絵の具で描くので、色というものは買うものだと思っていましたが、草木染めは染料(色)がすぐ手の届く自然の中にある。どの雑草も自分を主張する色を持っています。素晴らしいことです。私はその時感動した瞬間を忘れる事はできません。自然の色がその空間にあるだけで、空気が全然違います。気持ちが柔らかくなります。草木染めを通して自然と話ができるのです。

色は反射光が眼に入って来てから脳が理解するといいます。色は完全にイメージの世界です。(山崎)

紅葉まつりにて草木染め展覧会
昨年2024年10月、かやぶきの館本館ロビーにて草木染めの展示が行われました。かやぶきの梁の色合いと中庭の紅葉が見事に溶け合い、美しい空間が生まれました。来館されるお客さまにも大変ご好評いただきました。

辰野町が特産化を目指しているソルガムで

ソルガム

今日はイネ科の穀物「ソルガム」を使って染めます。辰野町内の遊休農地や耕作放棄地を有効活用しようと2022年からソルガムの生産を開始していますね。農業に携わる女性らでつくる「農村女性マイスター」がソルガムを使ったレシピを考案して、町内の小学校や保育園などで提供されています。ちょうど「あかねの会」に「農村女性マイスター」のメンバーがいますので、染めてみようかと。実を脱穀したあとの殻と茎を使います。

昨年の紅葉まつりの際の草木染めの展示は大好評でした(伊藤)

とても雰囲気がよかったですね。かやぶきの館のロビーの天井のハリとしっくり溶け込んでいました。風に揺られてユラユラと、色彩が踊るような草木染めの展示になりました。

ソルガムを煮出します

割り箸・輪ゴムなどで模様をつけます

優しいソルガム色
模様も素晴らしい

染色しながら豚汁鍋が登場!

自己流は独創性を磨きます

私はなんでも独学。絵も草木染めも。先生について教わったことがありません。様々な新しい発見はありますので新鮮です。今までの人生、夢中で走り続けて来ました。今になって思うのは、この地球上の色彩の素晴らしさを多くの人にもっと知って欲しいということ。草木染めの展覧会もいつか実現したいですね。

かやぶきの館もご協力させてください。本日はありがとうございました(伊藤)

林 節子先生のもうひとつの教室「弓会〜きゅうかい〜」

この日は「弓会」の皆さんが草木染め体験をされていました。鮮やかな紅葉を煮出し染め物 に!ピンクがかった紅色に染まり愛らしい仕上がりです。

煮出した紅葉

林節子先生の草木染めの作品(暖簾・ストール・ネクタイ・ハンカチなど) は 辰野町ふるさと納税の返礼品として、皆さんに喜ばれています。辰野町と姉妹都市であるニュージーランド・ワイトモの皆さんが来町した際には、草木染めをお土産にお持ち帰りいただきました。今でもワイトモに飾ってくださっているそうです。

お話をお聞きして

人間は100万もの色を識別することができるそうです。それは人間には想像力があるからだと感じました。美しい色彩を作り上げる皆さんの温かいパワーに脱帽です。「あかねの会」さん「弓会」さん、ありがとうございました。 (インタビュー=伊藤 優/山崎里枝 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)

かやぶきの館内[お茶の間再々]林先生の作品が場を和ませています

 

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