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なぜ川島への移住が増えているの?20年前から始まっていた移住しやすい地域づくり

長野県阿智村、原村、伊那市新山、そして辰野町川島。一見関係なさそうに見えるこの4地域に共通するものは何でしょう…?それは、県内に4つしかない「長野県移住モデル地区」に選ばれていること。移住モデル地区は、地域住民と行政が一体となって、積極的に移住者の溶け込み支援を行っている自治体だけが選ばれる認定制度。たしかに辰野町にいると、川島は特に移住定住の取り組みが活発だと耳にします。川島のこの盛り上がりは一体何なのだろう?そんな疑問を抱いた地域編集室メンバーの北埜が今回は川島の移住定住の歴史に迫ります!

時代を先取り。
20年前から始まった移住推進

川島の移住定住の取り組みは、意外にも「地方創生」が叫ばれるずっと昔、今から20年以上前から始まっていたのだとか。川島の移住推進に早くから取り組んだのは、元町議で現在は川島で商店を営む飯澤将武さん。

飯澤さんは、25年前に川島の児童数が減ってきていることに危機感を感じ、過疎化対策などを公約に掲げ、町議として活動。川島の児童数を増やすための取り組みである「川島小学校の将来を考える会」の立ち上げや、当時としては先進的だった移住受け入れ窓口の新設、移住定住ホームページ「UIネット」の開設、さらには移住者が地域に溶け込めるような地域交流イベントの開催など、精力的に川島の移住定住に取り組んだと言います。

なんと、今日辰野町が行っている移住定住施策の多くを20年前から実践されていたんです。

地域も尊重した移住者受け入れ

そんな中でも、飯澤さんが特に意識していたのは、「一人で突っ走らずに、みんなでやること」と、「移住者が溶け込みやすい体制づくり」。「ある時、地域住民の方から、“移住者ばかりの町になったら不安だ”という声を聞いたんだよ。

一方で、せっかく移住してくれた人が地域に馴染めずに孤立してしまうこともあってな。移住促進は、地域の皆さんの理解や応援がないと絶対できない。だから、移住してきた人がどんな人で、何を思って移住したのか、そういった文脈まで地域側に伝えたり、移住者と地域が関われるイベントを開催したりして、両者に溝が生まれないように活動してきたよ」そんな努力もあって、2003年にはなんと10家族が移住。その後も毎年、1、2組の家族連れが川島に移住してくれるようになったと言います。

その他にも千葉市の小学生の山村留学の受け入れも行うなど、外から人を呼び込む取組を精力的に行ってきた飯澤さん

川島をダメにしたくない

そんな飯澤さんとともに、20年以上前から移住定住に取り組んできたのは、前・人口減少対策委員会会長の荒井正輝さん。「このまま子供がいなくなれば、川島はダメになっちゃうかもしれない」。

今から20年ほど前の平成10年、川島小学校のPTA会長に荒井さんがなったとき、そんな危機感を抱いたと言います。そこから、移住者向けの空き家を発掘するための住民アンケートや、移住した人たちのお困りごとを解消するための移住者ヒアリング、空き家DIYイベントへのサポートなど、様々な取り組みを精力的に実施。

「川島を見たいっていう移住希望者のために仕事を抜け出して地域案内をしたこともあるよ。ボランティアなのにバカみたいだろう(笑)。でもそれだけ一生懸命だったんだな」

「川島が本当に大好き」と話す荒井さん。日課は缶集め。「1缶1円にも満たないが、塵も積もれば山だ」集めた缶は川島小学校に寄付しているそう

631人が参加した空き家DIY

飯澤さん、荒井さんをはじめ、多くの地域住民の熱心な取り組みもあって、冒頭のとおり川島は県内4番目の移住モデル地区に選定。県外移住者、特に子育て世代の移住がここ数年増えており、川島は移住先進地になりつつあります。

では、ここ最近移住された方は、川島の移住の取り組みをどう評価しているのでしょうか? 2018年に川島の川上耕地に移住をされた野口夫妻にお話を伺いました。

辰野町・川島との出会いは?

実家は横浜でしたが、自然に近い暮らしを求め、県の空き家バンク(詳しくは背面へ)を検索していた時に偶然、川島の古民家を見つけたのがきっかけです。畑つき古民家、川も山もあり、理想の物件だったので一目惚れしました。

移住する際に役立った制度はありますか?

古民家は空き家だったので、辰野町移住定住促進協議会が行っている「空き家DIY改修事業」を利用しました。
空き家の改修にかかる費用を補助してくれたので、金銭的に助かりました。

また、DIYは自分たちでやるだけではなく、地域住民をはじめ、移住検討者の方など、50人ほどの方々に改修をお手伝いしてもらえたので、関係性が築け、移住してから地域に溶け込みやすかったのも良かったです。

DIYのスキルも大工さんから教えてもらえたので、まさに一石三鳥でした。移住してから土日はもっぱらDIYを楽しんでいます(笑)。

野口家の2階にある床の張り替えBefore→After

20年以上前から始まった川島の移住の取り組み。当初から地域ぐるみでの移住者受け入れを大切にし、今日では移住者がスムーズに地域に溶け込める仕組みとして、空き家DIY改修事業が上手く機能しています。

同事業は、すでに5件の改修実績があり、DIYイベントへの延べ参加人数は、なんと631人! 赤の他人のお家ではあるけれど、みんなで協力して新居づくりをお手伝いするからこそ、移住者と地域が仲良しになる。

これは、飯澤さんがいっていた「一人じゃなく、みんなでやろう」、「移住者も溶け込みやすい体制を作ろう」という考え方にもどこか通じる部分がありそうです。

本気の思いが人を呼び込む

今回のお話を伺って感じたのは、移住者が増える町にできるかどうかは、町の将来を自分ごとに捉えて、がむしゃらに活動する方の存在が欠かせないということ。

飯澤さん、荒井さんはお二人とも、文字どおり仕事以上に一生懸命、移住推進に取り組んでおられました。「どうしてそんなに頑張れるのですか?」取材の最後に、率直な疑問を投げかけてみました。

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