長い髪と長い髭を蓄えていらっしゃる個性的な風貌が目をひく、伊藤純一さん。ここ川島でどんな日常をお過ごしになっていらっしゃるか、お話をお聞きしたくなりました。
ネパールやパキスタンの山に登っていました
私も伊藤です、よろしくお願いします。お生まれは?(伊藤)
松本市寿で昭和25年に生まれました。母の実家が松本でして。下諏訪町のヤシカに20歳から10年ほどいました。ワンダーフォーゲル部に所属していまして、八ヶ岳や上高地などの山に登りました。仲間に色々な山のことを教えてもらったのもその頃。本格的に登山がライフワークになりました。ネパールのアンナプルナで友人を亡くし、とても辛い思いをした経験もあります。苦しいこともたくさんありましたが、8,000メートル級の山に登る事が憧れでした。登山はなんとも言えない魅力があります。1番印象的な山は、ガッシャーブルでしたね。コンコルディアから最も大きく美しく見えるのがガッシャーブルム山群の中のⅣ峰(標高7,925m)です。ガッシャーブルムはチベット語で「輝く峰」という意味があってね。30代でこちらに帰ってきて体調を崩してしまい、しばらくのんびりしていました。もう40年も前のことです。今年は、友人に誘われて上高地のウエストン祭に献花のために参加しました。
ワンダーフォーゲル
語源はドイツ語で「Wander放浪する」と「vogel鳥」が組み合わされ作られた言葉で、日本語では「渡り鳥」と訳されます。19世紀後半にドイツで高校生や大学生の青年らが中心となって行われた野外活動が始まりと言われています。山野を徒歩旅行し、自然の中で自主的生活を営みつつ、心身を鍛練し、語りあうことを目的とする青年活動の一つのことをいいます。
菌ちゃん農法はじめました
「生ごみ先生」と多くの人々から親しみを込めて呼ばれる吉田俊道さんは長崎県佐世保市を拠点に農薬・化学肥料を使わない、自然の力を生かした農業を実践されています。その傍ら「NPO法人大地といのちの会」の理事長として、生ごみを発酵させて元気野菜を育てる実践を通して保育園や幼稚園、小学校で子どもたちに食べ物への感謝の心を伝えているのですが、私も挑戦したいと思い、葉っぱと菜種油、鶏糞を混ぜて。菌ちゃんを作りやすいようにブルーシートをかけて上から叩きます。生ゴミのうち魚の骨や貝はそのままではなく一度焼いてから使います。菌ちゃんが出来るまで3ヶ月ほどかかるので、冬は落ち葉を運んだり、2月までに菌ちゃん農園の準備をする季節です。有機肥料は土の中の微生物の餌になるそうですが、とにかくやってみないことにはわかりませんね。

山ワサビの畑
今は紫玉ねぎや山ワサビなどが育っています。山ワサビは外見は白っぽい色で、すりおろしたときも白色になります。海外ではホースラディッシュと呼ばれていて西洋料理でもよく使われています。山ワサビはワサビよりも約1.5倍辛いと言われていますよ!あと3年ほど経たないと大きくなりませんが、これで蕎麦を食べたいと思います。最近は食品メーカーでチューブの山ワサビも販売されました。ポピュラーになってきているのでしょうか。玉ねぎのまわりにはスギナがたくさん生えていますが、あえて抜かずそのままにしています。玉ねぎの成長のためにはそれがいいと思います。問題はサルですね。電柵など対策を考えなくてはなりませんが、サルが賢くなっているのでなかなか難しいですね。あとはカメムシ!ケールを食べられてしまいました。薄荷などのハーブも植えてみましたが効果は無し。なかなか難しいですね…。
純ちゃんは田んぼは作っていますか(伊藤)
一反ほど無農薬でやっています。しかし大変なことも多いです。収穫量が少なくなりますし。除草もなかなか…。アイガモも発酵鶏糞でないので窒素過多になってしまう話も聞きました。チェーン除草機を作り、引っ張って除草をします。無農薬は本当に奥が深いです。

菌ちゃん畝
穴のないマルチで
手づくりのランプシェード
チェーンソーで丸太をデザインカットし、ランプシェードを作ることに凝った時期があって幾つか制作しました。5〜6年前かな。材料は杉の木と檜の木で作っています。LEDライトを入れてね。杉は木肌がザラザラしているので棘が刺さり易いけれど、花をライトアップするととてもきれいですよ。誰かに教わった訳ではなくニュースで紹介していたので面白そうだと思い、はじめました。
一緒に近江山に登りましょう
最近は山に登っていますか(伊藤)
ほとんど登山はしなくなりましたね。時期になると山菜を採りに行ったりはします。4〜5年前は川島小学校の生徒さん、先生や親御さんと一緒に、多い時は30人くらいいたかなあ。毎年6月頃、近江山登山をしていましたよ。門前の山林組合の皆んなで連れて行ってね。土恋処の上の方に登り口があってそこから登ります。近江山は3時間くらいかかりますが、頂上でお弁当食べてね。気持ちがいいですよ。北アルプスを見ることができます。経ヶ岳は初心者には結構きついですね。遠いしね。三級の滝から登って行ったけれど、12時間くらいかかる。あと山に行くのは門前でキノコ山の整備として行くくらいですね。
純ちゃんの家の近くではホタルは見ることができますか(伊藤)
今はゲンジボタルも生息しています。荒神山スポーツ公園アラパ内に「ホタルラボ」がありカワニナの養殖をしています。幼虫のころゲンジボタルはカワニナ(川の巻貝)を食べるので、ほたる童謡公園にもはなしてホタルの育成に役立っていますよね。カワニナは朴木の葉(ほうば)を食べるんですよ。葉脈を見事にきれいに残して食べ尽くしています。
川島が1番いい。ここが1番。
ご自分で作られた野菜でどんなお料理をしますか(山崎)
今の時期は玉ねぎがおいしいですね。辛いけれどスライスは最高です。塩と酢で和えてね。お酒もおいしいし。やっぱり日本酒!昨年作ったキュウリの塩漬けもいいね。3回ほど漬けると長持ちします。
私が心配するのは、現代の野菜は、栄養価(ビタミン・ミネラル)がとても低いこと。例えば3分の1の栄養になっているのなら、野菜を3倍の量を食べなければならない。それは実際むずかしい話。化学肥料や合成肥料の使用など、農業を取り巻く環境が変化し 「地力」がなくなってきている。都会で水だけで育てている作物もあるけれど、土壌は単に食糧生産の場ではなくて人間の豊かさの源泉だと私は思う。やっぱり川島がいいね。ここがいい!
お話をお聞きして
かやぶきの館の農園「かやぶき農園」も伊藤純一さんにお手伝いしていただきたく、お願いがてらの取材となりました。とにかくやってみる。それから考える。受け入れる懐の深い方でした。ありがとうございました。(インタビュー=伊藤 優/山崎里枝 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)