自然

横川蛇石ヒキガエル見守り隊スタート! 木田耕一さん 土田秀実さん 根橋正美さん

川島区、横川蛇石広場の手前の町道側溝に、ヒキガエルとヤマアカガエルの産卵場所があります。近年は従来 の生態系が崩れ、産卵に来るカエルが少なくなっていま す。木田耕一さんをはじめ、川島区の有志の皆さんが 「産卵場所の手入れをし、カエルたちが安心して子育てをしてほしい」との思いで「横川蛇石ヒキガエル見守り隊」を発足させました。隊長でカエルの研究をされていた木田耕一さん、根橋正美さん、土田秀実さんにお話を伺いました。

青空の下20名ほどの有志が集まった

産卵数は近年の半数以下に減少

根橋正美さん「横川蛇石ヒキガエル見守り隊」の発足の経緯を教えてください(伊藤)

木田耕一さんとお話をさせていただいていて、ヒキガエルの産卵数がだんだん少なくなってしまっている状況をお聞きしました。何とかしなければと思いました。5年ほど前までは、毎年4月頃、辰野町の職員さん、川島区の皆さんで横川ダムの方まで道路側溝の土砂の片付けをしてもらっていましたが、新型コロナウイルス発生時から、業者さんにお願いしているようですが、片付けが十分でないところもあり、この度、有志を募集することになりました。当日は小学生のお子さんはじめ、大勢の方に集まっていただきました。ちょうどカエルも下りてきていなかったので、作業がしやすかったです。側溝の土砂を掻き出してもらって、縁も綺麗にし、土嚢を積んで、水が道路まであふれないようにしました。これからの季節、蛇石キャンプ場に訪れるお客さまも増えてきます。通行の際には、カエルに気をつけていただいて、横川の自然を楽しんで欲しいと思います。またカエルにも喜んでもらえたらうれしいですね。

根橋正美さん

道路整備も兼ねて大きな落石も片付け

今の生態系の状態を知ることだけでも意味があります

土田秀実さん、本日はいかがでしたでしょうか(伊藤)

この近くを通る際には、生き物の観察をしていただきたいと思います。これから5月〜7月は蝶の季節です。水を飲みに来る蝶が増えますね。トンボも来ると思います。蛇石のゲートの先は歩きになりますが、様々な蝶を見ることが出来ます。皆さんぜひトレッキングにきてください。

この3月まで川島小学校に在学していた3年生の男の子

側溝からは大量の泥が

木田耕一さんはカエルにお詳しいとお聞きしました(山崎)

私は大学時代、カエルの研究をしていました。戦後の農業技術の変化も影響し、カエルの居場所が減っている現状です。農村の生物多様性低下の要因に、乾田化の増加が挙げられています。ずっと田んぼに水を張っていると春、土を耕しにくいこともあります。稲のために途中で一旦水を抜く(中干し)作業もするようになりました。川島区も、田んぼもそば畑になってきています。そもそも田んぼ自体が少なくなっているので、カエルが少なくなっているのは、当たり前なのですが、農業構造の課題も深く関わってきます。

2023年4月4日に遭遇したアズマヒキガエルのオス。繁殖期は体色が黄色っぽくなり背面はなめらかになる。メスは明るい褐色。

作業中に現れたヤマアカガエル「ニャニャニャニャ」と鳴きます。泥まみれになっているが体色は茶色である。

今年1月30日かやぶきの館外の薪の中から現れたキベリタテハ土田秀実さんによると蛇石周辺から飛んできた可能性が…。

ミミズが土にいるということは土の中に適度な有機物が含まれており、それをエサにする生物が生息できる環境であるという

夏の風物詩として今後もカエルがいる風景を

この写真は偶然、2年前に蛇石に行く途中で撮れた写真です(山崎)

これは「アズマヒキガエル」ですね。西日本の方には「ニホンヒキガエル」が生息しています。このたくさんの卵隗を産むわけですから、母ガエルも命懸けです。産卵後、息絶えてしまうカエルも多いです。

木田さんが見守り隊を立ち上げようと思われたのですか(山崎)

去年、ここの側溝から水があふれて卵隗が道路まで出てきてしまっていた光景を見ました。道路も水浸し。私はカエルの卵隗を桶か何かに移して一時避難をさせてあげようくらいの気持ちでいたのです。良ければ猟友会の小屋に置かせてもらおうかと。昨年の冬、根橋正美さんとお話しさせていただいて「何とかしましょう」ということになりました。ここは山からの湧き水が出ている場所、水溜まりがあるとカエルはそこに向かいます。表面はゼラチン質に守られてはいますが、卵隗が道路に出て乾いてしまうとかえらずに死んでしまいます。

4月5日 泥あげ後の側溝

4月13日 アズマヒキガエルを確認(木田さん撮影)

「カエルの産卵地につき注意」という看板あればいいですね(山崎)

実は、カエルの横断中看板を作っていまして…。ですがゴールデンウィークにはカエルが山に戻るまでに間に合わないかもしれません…。

木田さんは、いつからカエルに興味が?(山崎)

中学生の頃、近所にウシガエルがいて面白いなあと興味が沸き、高校生の時は、飼っていたこともあります。農業用の溜池にいました。ウシガエルが日本にやってきたのは1918年。食用としてアメリカから輸入されたそうです。何でも食べますね。バッタ、カマキリ、ザリガニ、カエルも食べます。カエルをカエルとして認識しませんので、共食いをしているとは思っていません?! 動く餌として食べてしまいます。在来種をどんどん食べてしまうので問題になっています。

川島のカエルに願うことはありますか(山崎)

川島というよりは、この国全体の季節の風物詩としても、子どもの頃からの当たり前の景色を失うことは寂しいですし、守って行かなければと思います。ビオトープを作るという方法もありますが、管理の問題もありますし。この「横川蛇石ヒキガエル見守り隊」の活動を続けていくことで、様々な方に関心を持っていただければうれしいです。

本日はありがとうございました(山崎)

木田耕一さん

ビオトープ(Biotop)生物生息空間
自然の生態系を再現して、生き物や植物を育てること。様々な生き物が、お互いに作用しあうことで水質浄化のサイクルが完成する。

お話をお聞きして

2年前、偶然遭遇したアズマヒキガエル。思わずパシャリ!木田さんと同じく、私は、子どもの頃からカエルが好きでオタマジャクシを飼っていました。木田さんとの「カエル談義」が楽しすぎてとても勉強になりました。もちろん私も隊員の仲間入りをしました。これからも見守っていきます。 (インタビュー=伊藤 優/山崎里枝 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)

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