「山・木・茸のことは、この方に聞け」というくらい、山と共に生きている方。東京でコックをしていた経験もおありの、現在は川島区門前にお住まいで農林家でいらっしゃる土田功さんの人生をお聞きしました。
子供の頃の山と 今の山は異なりますね
本日はよろしくお願いします。功さんにとって川島の魅力は何でしょう(伊藤)
まず自然ですね。川島じゃなかったら戻って来なかったと思いますね。東京でイタリアンと中華料理のコックをしていました。その後、諏訪市の居酒屋でも調理師をしていまして。そこを辞めてからしばらく何もしていない時期がありましてね。そんな時、従姉妹の旦那さんに誘われて林業見学に行ったんです。川島で生まれ育ったのにね。「世の中には、こんな仕事があるんだ」と興味がわき、次の日から行き始めました。
子どもの頃から山で遊んでいましたか(伊藤)
山菜はそんなに好きではなかったけれど、小さい頃から、当たり前のように川遊びをしたり魚を獲ったりしていました。魚の種類は多かったです。石のあるところには、岩魚、アマゴ、ハヤ、赤魚がいました。中学生の時、ダムが作られた時の影響で、水温が上がり、魚は少なくなってしまいました。

川島の山は変わりましたか(伊藤)
だいぶ違いますね。ここまで針葉樹、松の木は多くなかったんです。雑木林でした。植えた松もありますし、他の木を伐採の際、山の尾根に生えている松を残していたので、その松の種が落ちて自然に増えて行きましたね。おかげで松茸の産地になりましたので、結果的にはよかったですが。この辺の山は、私が小学生の時に皆伐をしていました。その当時は、裸山でね。唐松を植えていました。地拵えと言って、木が生える面積を増やすためと、地が崩れないように、切り落とした枝や木を棚にしていく作業をします。そのままにしておくと荒れただけの山になってしまうのです。地盤が強くなると様々な種類の木が生えやすくなります。次の木を育つようにして徐々に山の地を強くしていきます。

山は暮らしそのもの
伐採に適している時期はありますか(伊藤)
春夏秋冬、関係なく伐採の必要があれば山に入ります。個人林であろうが、伐期が来ている木はある程度、間伐してあげないと。唐松は柱や合板に使われる等、需要があります。目の締まり具合とか幹の肌が変化してきます。120年ほど経った唐松は天唐と呼ばれ重宝されます。唐松は根が少ないので倒れやすく、次の木を植えてあげないと森が荒れてしまいます。広葉樹も同じ、実のなる木がないと、獣が山から降りてきてしまう。実は、伐採は冬が1番適しています。他の季節は、樹皮が剥いても、腐りやすく虫も入りやすいので向きません。氷点下の中、雪の深い時期に。去年は、塩尻市の洗馬の山に皆伐に行きました。木を倒す際もきちんと方向を定めないと、思いがけず逆に倒れてしまう場合もあります。よほど経験を積んだ方でないと危険です。

私のおじいさんは、山で炭焼きをしていました。当時88才のおじいさんの後について真冬の山に行ったことがあります。特に炭焼き小屋があったわけではなく、木のソリを担いで、炭を焼くために穴を掘り木を並べて、そこへ土を被してドームみたいな物を作ってありましたね。当時の生活は、常に山に行き木を切り、炭を焼いていました。主に出荷用です。自分の家は薪で火を焚いて、焚き付けは拾った杉の葉を燃やして。だから山がきれいでした。

動物との出会いもたくさんありました
熊は茸山に入っている時、何回か遭遇したことがあります。目が会った途端、小熊を追いかけてみたりね。捕まえようとしました。
追いかけるのですか!?(山崎)
小熊でも早い早い!とても追いつけません。親熊に会った時は、さすがに軽トラの中に慌てて避難しましたが。猿は1番タチが悪い。石を落として来ます。有賀峠を走っていた時、鹿が上から落ちてきたことがありました。あれは驚きました。鹿が飛んだ着地点が私の車!廃車になりました(笑)
谷逢いの里かわしま Kawashima @kawashima1186
信州辰野町の川島地区のYouTubeチャンネル『谷逢いの里かわしま』。記念すべき1本目の動画は、川島で農業と林業をなさっている土田功さんのインタビュー動画です
山に入る時、気をつけること
最近はマダニに要注意ですね。家にいるようなダニとは異なり致死率が高いので怖いですよ。テレビでも報道されるようになりました。何年か前にマダニにやられたことがあります。ずっと体調が悪くて熱も38°Cまで上がって、まさかマダニだと思わず、取ってしまったら体の中に残っていまして。1ヶ月半くらい入院しました。草むらにいる場合もあります。ここ数年で倍増しているそうですから、皆さんも気をつけてください。長靴と長袖の服は必須です。 子どもの頃は「山に行く時、気をつけろ」なんて言われたことなんてなかった。地蜂追いは行きましたね。セルロイド燃やして、蜂を酔わせてね。蜂の子を取りました。

林業を絶やしてはいけない
桜木にレースみたいな苔がついているのですが、どうすればよいでしょうか?(山崎)
割と病気といいますか、ウイルス性のものです。苔の仲間です。弱っている木につきやすいです。金属性のブラシで擦ってあげるといいですね。例えば、その苔がホダ木についているとキノコは生えてきません。あとは、植樹変換することが必要です。間と間に木を植えて2〜3年経って根付いたら切ってしまうのがいいです。桜の木などは根の周りをきれいにしておかないと弱ります。感染する原因は、気温が上昇しているせいもありますね。

年々木の様子が変化しているのを感じます(山崎)
川島は林業を絶やしてはいけないと思いますね。廃れていくと大変なことになる、人が山に入れなくなる。もう少し早くから後継者を育てることをすべきでした。道具を渡してね。各耕地毎に山林組合がありますが、山の手入れを行政にお願いしている耕地もあります。林業だけでなく、有害鳥獣対策の問題もありますし、山を守って行かないといけません。山との関わりは、生活そのものですから。


お話をお聞きして
山に詳しくない私でも、木々や草花の変化に気づきます。紅葉の鮮やかさや、樹皮や葉の色などです。今年も採れると予想していた花桃や山法師の実が収穫できない。自然が疲れているように感じます。土田さんのお話を伺って、人間が住まわせていただいている以上、わずかでも責任を持ってお世話をするという意識を持つことが大切だと思いました。(インタビュー=伊藤 優/山崎里枝 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)