川島区渡戸の「いいざわ商店」の3人姉妹の長女として生まれ育ち、現在は東京国分寺にお住まいで、自然 遊び研究家であり、臨床心理士の南めぐみさんにお話を伺いました。
東京では自然と向きあう遊びができません
本日はよろしくお願いします「里山遊び」はいつから始まりましたか(伊藤)
もう3年目になりますね。元々都会の方々を対象に日帰りで田舎の体験をして頂こうと企画し、そのうち宿泊も希望される方もいらして輪が広がって行きました。長野県出身で土に親しんで来たのですが、東京に引っ越してからその機会がなくなり、また土に触りたいという方もいます。春は山菜採りや種まき(5月5日)夏は夏野菜収穫と川遊び(7月14日・8月18日)そして今日(10月13日)畑収穫作業と山歩きをしました。
普段は東京にお住まいになっていらっしゃるのですね(伊藤)
今は国分寺に住んでいます。我が家の近くはまだ畑も残っています。公園はあるにはあるのですが、公共施設なので「〜してはいけません」などの決まりごとがあります。木に登ったり、枝をへし折ったり、お花を摘んだり、ここ川島で当たり前にできることが、東京では難しいですね。私は子どもがふたりおりまして。長女は穏やかで、おっとりとした性格です。人なかが得意ではありませんが、ここに帰ってくると落ち着くそうです。娘は畜産科がある高校に進みたいと言っています。馬と触れあうのも大好きですね。長男は4年生です。とにかくやんちゃ!東京でもここ川島でも変わりません。生き生き伸び伸び、やりたい放題自由にしていますね(笑)都市部の子どもたちは、ショッピングモールで遊ぶのが通常の休みの過ごし方ですが…。
身近に田舎がない人のためにできること
私たちは帰りたくなったら、ここ川島に帰って来ることができる、でも東京生まれの人々は帰る田舎がない。土をいじる場所もない。そのことに気づいたことも「里山遊び」を始めた動機ですね。この素晴らしい体験を、私たちだけで独り占めしてしまっていいのだろうか。何かできることはないだろうかと。川島ではCo-Satoさん(子連れ家族向け体験型宿泊施設)にお声かけて、大勢でワイワイ集まる時もあります。私は、皆さんに農機具をどんどん使ってもらいます。使い方はご指導しますので。子供たちもそうですが、お母さん方が何より楽しそうです。「里山遊び」がきっかけで、農業に興味を持っていただけたらうれしいです。
本日の「里山遊び」は
今日はどんな里山遊びをされたのですか(伊藤)
畑の収穫のあと、みんなで山に行きました。キノコの菌糸を発見したり、皆さん大喜びでした。食べれないキノコもとりあえず採ってみる。収穫できた喜びを味わうことが大切。年長さんの子どもさんは「生まれて初めて山に登った〜」と。真面目に真剣に山に登って帰ってきました。遠足のように整備された山道を歩くのとは違い、新鮮な発見があちらこちらにありますね。
現代の子供たちは「消費者」消費をすることで喜びを得ている
私が「里山遊び」を通じて伝えたいことは、土の上を歩くこと、畑の美味しい野菜を食べること、土・草と格闘してアドレナリンを放出することが、私たちの心身のバランスを整え、人生を豊かにするということです。私は「ファーマーズハイ」と呼んでいますが(笑)ご先祖様から受け継がれた日本人の生活ですね。 今の子どもたちは幼い頃から消費主義社会で育っている。物を買ってもらうことが幸せ。与えてもらうと満たされる。そうではなく、自分で力を出して何でもやってみる。それが自分の成長につながるのではと思いますね。収穫体験に行っても、用意された木から農産物を採るだけ、しかも数制限あり(笑)好きなだけ採れない。結局、消費なのです。本来なら採れなくてもいい。どうして採れないのだろうと考える、工夫する。それが面白いのではないでしょうか。バーチャルでない、リアルな体験は人生に貴重な時間だと思いますね。
川島の伝説を伝えて行きたい
川島には瑞光寺や蛇石、はだか武兵衛の伝説などがあります。旅のお坊さんが熊野神社に立ち寄り、傍の石に座って休んでいたところ、向こうの山に彩雲が見えたので、そこに瑞光寺を建立したといいます。お坊さんが、杖を大地に突き刺して、その杖が柳に変わったそうです。
はだか武兵衛は、まさにコロナ禍のお話のようです(山崎)
そうですね。コロナ禍はソーシャルディスタンス。他人との接触を必要最低限にする生活を強いられることになりましたが、はだか武兵衛は逆。疫病の人の中に進んで飛び込んで行った。自分が感染するかもしれないのに。考えさせられます。そんな伝説を紙芝居にしたいと思っています。
ひとつの有機体である「川島」
川島は先進的なことを進んでやっていますね(伊藤)
移住定住に関しても受け入れの姿勢が出来ていますし、新しいものに対して皆さんが協力します。先駆けとなった「あずかぼ」さん、どろん田バレーや紅葉まつり、チャレンジを挑む方が集まって来ます。いわゆる「川島」という名の「有機体」ですよね。全部繋がっている、まさにキノコの菌糸のように(笑)
私は東京でリハビリ職をしています。言語聴覚士・臨床心理士としてダウン症や自閉スペクトラム症の子供たちを対象に言葉の練習をしたり、親御さんのご相談にのったりしています。これは頭の中の想像ですが、将来は不登校の子どもたちを対象に、人と人とが繋がれるセラピー的なホームスクールとして「里山学校」のような体験会ができればと思っています。
お話をお聞きして
里山遊びをしながら、人間にとって何が1番大切かをを気づいて欲しい。という熱い思いが南さんから伝わります。川島と国分寺、両方を行き来しながら自分にできることは何か常に考えている方です。川島の伝説の紙芝居、楽しみにしています。(インタビュー=伊藤 優/山崎里枝 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)