こんにちは。いまこの記事を書いている3月、身の回りはコロナ騒動で落ち着かない日々が続いています。皆さんのお手元にこの新聞が届く4月には、少しでもいつも通りの日常が戻っていることを願っています…。
さて、美しい里山の暮らしやそこに生きる人々のライフストーリーをお届けする、信州・辰野町の川島発、かわしま地域新聞も第5回を迎えました。
発行するたびに、地域内外から様々な感想をいただけるようになり、編集メンバー一同嬉しく思っています!今回取り上げるのは、“日本一のかやぶき屋根”を持つお宿、かやぶきの館。川島のシンボル的存在で、この新聞の発行も応援してくれています。
同館は2020年でオープン21周年、さらに2019年4月に運営会社が株式会社TUG BOATに変わってからちょうど1周年を迎えます。
本号では、そんな新生・かやぶきの館の1周年を記念して、同館のこれまでの歩みと、地域の方々から見たかやぶきの館についてインタビューを実施。
特に、地域の方々が感じる同館の魅力や、期待することなど、切っても切り離せない、かやぶきの館と川島のカンケイについてお話を伺いました。
地域が支え続けたかやぶきの館
そもそも、かやぶきの館は川島の農村振興を目的に、平成10年に辰野町の開発公社によってつくられました。
いわゆる“グリーンツーリズム”という地域活性化の考え方に基づいて、地域野菜を同館で加工して旅行者に提供したり、都会の人たちに農業を体験してもらうなど、「農」を中心に地域と都市をつないで、川島地域の活性化を目指す拠点としてスタートしたそう。
そんな同館は、オープン当初から地域の人に支えられて営業をしてきたといいます。そして地域の中でも特に関わりが深いのが、川島地区、門前耕地の一ノ瀬秋雄さんと中山信郎さん。2人は同館を地元側として支える協力会メンバーです。
一ノ瀬さん
「おれらにとってかやぶきは、できた当初からうんと親しみのある場所なんだ。かやぶきができる前、この辺りはおれら門前住民の畑が広がっていたんだけれど、その土地にかやぶきの館が建ってね。そういう縁もあったもんで、門前耕地としてもかやぶきの館の運営を応援することになったんだ。まずは敷地内の草刈りから始まって、その他にもかやぶきで使っている炭づりなんかも協力会でやっているよ」
世界と川島つなぐ、架け橋に
そういった“共同作業”を通じて、門前耕地とかやぶきの館は絆を深めてきたといいます。また門前耕地にとっても、同館はかけがえのない存在だと中山さんは話します。
中山さん
「かやぶきの館があることで、おれらが住んでいる門前の方にまで、人がきてくれることはありがたいよ。門前って、川島の中でも特に奥まったところにあってアクセスも良くないんだ。わかりやすく例えるなら、かやぶきの手前までが“里山”で、その奥にある門前からは“山里”みたいなもんかな。こういうと、“山里は言い過ぎだ”って他の人たちに怒られちゃうかもしれないけどよ(笑)。でもやっぱりおれらは門前のことが大好きだし、この山里の美しさをもっと知ってほしいんだよ。だから、かやぶきがあるおかげで外の人にも門前の美しさを知ってもらえるのは嬉しいなあ」
「春になると門前は、おれらが植えた桜並木がきれいだし、6月ごろに開催する『門前ほたるまつり』も風情があって本当にきれい。そういった地域の魅力を生かして一緒に川島を盛り上げてくれたら嬉しいなあ」
かやぶきと地域のさらなる連携を望む、前向きな声をいただきました。また、そういった観光の視点以外にも、かやぶきの館は地域に欠かせないと語るのは、令和2年度に川島区区長を務められていた小澤清さんです。
小澤さん
「かやぶきは、観光だけじゃなく、地産地消による地元農業の活性化や、移住定住にも貢献していると思うよ。今後はもっと、かやぶきを中心に川島がまとまって、川島の魅力をPRする発信基地や、地元のお土産や情報が集まるターミナル基地になってもらえたら、もっと川島は盛り上がる。
あとは、かやぶきで人が集まるイベントなんかをやってもらったら、川島の住民同士の交流も増えて、地域の連帯ももっと生まれるんじゃないかな」
日常に疲れたら、ここに来て
そういった地域側の期待もある中で、新生・かやぶきの館の皆さんはどんなことを思い、考え、この一年を歩んでこられたのでしょうか?
かやぶきの館の皆さんは、「体制が新たに変わる中で、とにかく目の前のこと一つひとつ取り組んだ一年だった」と振り返ります。特に、同館では2019年に約半年をかけて、コンセプト(目指すべき方向性を言語化したもの)を刷新。
「谷逢いの宿 心を耕す、もう一つのふるさと」
という合言葉を掲げ、地域・町外から来る旅人がほっと癒され、満足してもらえるかやぶきの館を目指して、日夜サービス改善に努めているそう。同館の目指す理想について、同館のお蕎麦処、いわかがみで長年働かれている、一ノ瀬みど里さんは「かやぶきがお客さんで溢れる賑やかな場所になったらと思って蕎麦を打っているよ」と語ります。
実は、私もこの新聞を発行するにあたってかやぶきの館にしばしば行くのですが、働くスタッフの方々の雰囲気がどんどんと明るく、活きいきとしていっているのが印象的でした。
例えば、最近販売を始めて大人気の小澤さかゑさん手作りの「こやきちゃん」や、「日本酒の湯」、「生姜蜂蜜の湯」といった月替りのお風呂などは、スタッフの方々のひらめきから生まれたアイデアだとか。女将さんたちも「日常に疲れた人がふらっと立ち寄って、明日から頑張れる活力を養ってもらえるような場にしたい!」と力強く話してくれました。
地域の方々のかやぶきへの期待と、力強くあたたかな支援。そしてその期待に応えようとチーム一丸になって魅力アップに取り組むかやぶきの館の皆さん。2020年の川島と、かやぶきの館がますます楽しみになりました。
そして、私たちかわしま地域新聞も、川島やかやぶきの館の素敵な取り組みを少しでも町内外にお届けできるよう頑張っていきます!