地域創生

かやぶきの館のおやきを作り続けて26年 かやぶきの館 小澤さかゑさん

信州の郷土食「おやき」は、小麦粉やそば粉などを水で溶いて練り、こねた生地で、野菜やあん、漬物などの具を包んで焼いたもの。歴史はかなり古く、縄文時代には原型が存在していたそうです。そんなソウルフードを作り続けて26年、かやぶきの館、小澤さかゑさんにお話を伺いました。

地域みんなで共創した、川島おやき文化

さかゑさん、本日はよろしくお願いします。 かやぶきの館といえば「おやき」と「そば」です。

元々は1990年代の中頃に川島区の観光協会が吉田俊二さんを中心に発足した際、川島の活性化のために、おやきやおそばを地域で作ろうという話になりました。有志が集まって「じゃあ私はおそば」「私はおやき作るわ」と担当を決めてね。川島地区では、地元のほとんどの人が、そばを打てるのでおそばは馴染みがあったけれど、おやきは皆初めてでした。えびす講の時に麦饅頭は作った事はありましたけどね。地区の代表として一ノ瀬美和子さんが、おやき作りを習いに行って、私たちは小川村の「小川の庄」はじめ様々なところに視察に行きました。

川島区のみんなで築き上げてきたおやき文化がかやぶきの館に継承されていったんですね。

かやぶきの館が1998年に完成してから、みんなで研究したおやきのレシピを使うことになってね。オープン当時連日200個のおやきがあっという間になくなるの。無我夢中でした。とにかくこの味は地域のみんなで作り上げたものなんだよね。研究に研究を重ねて、一ノ瀬美和子さんと夜、勉強会をしましたね。完成するまでとても時間がかかりましたから。最初はあんこ1種類だけのスタートでした。当時は色々なところに販売に行きました。辰野町役場、辰野病院に隔週でね、毎回即完売で。本当に苦労したけれど若さもあったからなんとかやってこれましたね。

人気の野沢菜おやきの具を作ります。2年ほど漬けたお菜漬けをよく洗い塩出しをした後、煮汁がなくなるまで煮つけます。

中身の具はこだわりがありますか

あんこはずっと北海道産の小豆を使っています。国産の小豆はやはり上質です。ですが気候の変動が影響して収穫量が少ない年もあれば、品質も変わる場合もあります。とにかく小豆は煮てみれば、すぐにわかります。野沢菜は塩分の角を取るため2年寝かせます。

季節ごとのおやきもおいしいですよ。このまわりで採れたよもぎを練り込んだ皮、そば粉の皮はご予約で。夏のフキ、秋茄子、冬かぼちゃなど。おやきは中身でおいしさが決まると思います。お赤飯を入れた「紅白お八起」もお祝いの品として喜ばれます。

ねぎみそこやきちゃん[2月3月限定]

紅白お八起[お赤飯入りこやきちゃん ご予約制です]

手土産の文化も変わりつつあります

コロナで世の中の流れも変容しています

そうですね。高遠なら「高遠まんじゅう」諏訪地域なら「塩ようかん」など定番のお菓子をお土産にという安心感がありました。世の中の流れもコロナをきっかけに変化していますね。親戚などを訪ねて行く機会が減りつつあります。おやきも例外ではありませんね。実際「高遠まんじゅう」も子亀まんじゅうが発売されたように、かやぶきの館も「こやきちゃん」が仲間入りして4年くらい経ちます。気軽に少量食べたいのですね。

2023年に辰野町の認定特産品に認定されました

うれしいですね。手間はかかるけど、手作りの温かみがあります。保存料が入っていないので賞味期限は短いですが身体には安心安全、大量生産は出来ないけれど、川島の、かやぶきの、ここだけの味です。おやきといっても、北信(長野県北部)だと蒸して作る場合が多いけれど、この辺りの南信だと焼いて食べるほうが多いですね。2023年にはテレビドラマにもここかやぶきの館でおやき作りのシーンがありました。とても良い思い出になりました。今までたくさんのメディアの取材も受けたわね。

なつかしい味ですよ

健康の秘訣はニンニクと歩くことでしょうか

さかゑさんのお生まれは

原村です。今は別荘地としてずいぶん賑やかな村になりましたね。

ブルーベリーも作ってらっしゃいますね!大粒でとても甘いです。 ところで、さかゑさんの元気の秘訣はなんでしょうか。

畑でブルーベリーを作っています。もう何年になるかしらね。手をかけたものは身体にも良いですね。炊飯器で黒ニンニクを作り毎日食べています。匂いも気にならず果物みたいに柔らかくなりますよ。暖かくなったら散歩もします。なんと言っても健康が一番ですから。

伝統保存食「お氷餅」もさかゑさんに教えていただいています。

かやぶきの館のオープン当初から作り続けていますね。軒下に吊るす光景は、すっかり冬の風物詩になりました。今シーズンは暖冬で心配でしたが、冷え込んだ日が続いたので、きれいな真っ白いお氷餅ができると期待しています。ぬるま湯で戻して、お砂糖をかけて食べるとおいしいです。昔はよく野良仕事の合間に干し柿と一緒にそのままかじったりしましたよ。寒い時期の作業で大変だけれど、昔の人々の知恵、受け継いで行かなければと思います。

おやき作り体験のお話
 特に印象に残っているのが、2年前ウクライナの方々とおやき作り体験をした事です。お辛い体験をされ、遠く離れた日本まで避難し、祖国に残した家族の無事を祈りながら、心配で胸が張り裂ける思いをしている皆さん。それなのに笑顔をたやさず、おやき作りを楽しんでいらっしゃいました。こちらまで勇気をもらいました。

2022年4月末、高森町にウクライナから9名の方々が避難されました。6月には辰野町に来てほたる祭りを見たりおやき作り体験をしました

お話をお聞きして

いつも笑顔のさかゑさん。本当にお元気です。人生の先輩として見習いたいところがたくさんあります。これからも大勢の方に愛される「旨しもの」を作り続けていただきたいと思います。 (インタビュー=伊藤 優 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)

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