地域創生

町内外から過去最高100人を集客した人気のトレッキングツアーの秘訣は?

“新日本歩く道紀行100選”に認定された、かわしま森の道

長野県上伊那郡辰野町にある美しい里山のかわしま。黄金色の稲穂と白いそばの花の季節が終わり、秋が深まる頃、かわしまの奥地にある横川渓谷は美しい紅葉の季節を迎えます。
そんな横川渓谷の『かやぶきの館~横川ダム~国天然記念物「横川の蛇石」~三級の滝』へと続くトレッキングコースが「新日本歩く道紀行100選 森の道」に選ばれたことをご存知でしょうか?

「新日本歩く道紀行100選」は、地域の誇るべき道を選び、歩くことでしか観えてこない地域の魅力を発見したり、健康づくりと観光促進を伴った経済の活性化に寄与することなどを目的とした認定制度です。その道を歩く人にとって安心・安全であるかなどの基準のもと、10ある道のテーマから選定・認定がされています。「横川渓谷原生林トレッキング」コースはその中でも森や山林の中の道、渓谷や滝などに出会える「森の道」に認定されており、17km(往復)、所要時間およそ6時間40分(往復)のコースで、体力に応じて、スタート地点を変えることができます。

かつて三級の滝は近くまで車で行くことができ、誰でも気軽に遊びに行ける場所でした。けれども平成18年の豪雨災害により土砂崩れがおき、その後蛇石キャンプ場にゲートが設置され、その先へは許可された車以外の乗り入れができなくなってしまいました。ちょうどその
頃、昔から行われてきた開山祭もなくなり、夏に何か企画できないかとこのトレッキングツアーを考えたのが、かわしまで地域を盛り上げようと活動を続ける「川島振興会」の皆さんでした。

毎回ツアーの前に川島振興会の皆さんがコースを整備。こういった活動のおかげできれいなコースが保たれています。

川島の歴史に詳しい、ガイドの飯澤誠さん。

ピンチをチャンスに!
災害後生まれたトレッキングツアー

中央アルプス最北端、経ヶ岳を源とする横川渓谷は、澄んだきれいな清流と生命力溢れる新緑や、様々な樹木から織り成す色とりどりの紅葉など季節ごとに様々な表情で見る人を楽しませてくれます。またコースの最終地点、三級の滝は横川渓谷の原生林の中で50mの高さを三段に折れ曲がり落下する壮大な滝で、ものすごい水量でしぶきをあげており、見どころの一つです。

2019年11月号の地域新聞でも過去24年に渡り続けてきた「横川峡紅葉まつり」に対する振興会の皆さんの想いを掲載しましたが、10年以上続けてきたこの「横川渓谷原生林トレッキング」ツアーも、いまでは川島振興会の企画するイベントの中で紅葉まつりとともに特に人気の高いイベントとなり、町内外から過去最高100人を集客したことも。ピンチをチャンスに変える。振興会の皆さんのアイデアと継続する力に驚かされました。

ただ歩くだけじゃない。
地元住民ガイドによる樹木・蝶・歴史の話が面白い!

今回お話を伺ったのは表紙の素敵な笑顔が印象的な、川島振興会のメンバーの土田秀実さん。
川島振興会の一部のメンバーで構成される「横川渓谷原生林トレッキング実行委員会」には、蝶に詳しい土田秀実さんをはじめ、かわしまの歴史や伝説に詳しいメンバーなど知識が豊富な人が多く、ツアーではそんなメンバーがトレッキングガイドを務めて様々な話を聞かせてくれるのが魅力の一つだと土田さんは話します。たしかにそのお話の面白いこと!この日、取材の中で私が伺っただけでも「もっともっと聞いてみたい!」と思えるお話が盛りだ
くさんでした。

その一部をご紹介したいと思います。

ツアーにはどんな方が参加されているんですか?

―土田秀実さん(以下、土田さん)
そうだね、幅広い世代の方が参加されているかな。季節によって見られるものが変わるから、虫や蝶が多く見られる去年の7月のツアーは小学生や未就学児も結構参加してくれていてね。たくさん歩くから小さい子は帰りは疲れておんぶされていた子もいたけど、小学生くらいになるとしっかり歩けていたよ。

子どもたちが虫を採って帰れるのもいいですね!

―土田さん
そうそう!夏はいろんな虫や蝶がいるから子どもたちが喜んで採っていてね。カミキリムシなんかも種類が多いんだよ。

土田さんはいつ頃から蝶がお好きだったんですか?

―土田さん
小学生の頃からかな。小・中・高と蝶を採集して標本にしたりとコレクターだったんだよ。その後製造業の会社に就職してからも、技術指導で中国やマレーシア、ベトナムなんかに出張で行くことも多かったので、出張先で休みの日には現地スタッフに車出してもらってよく蝶を探しに行ったなぁ。国内でも沖縄には毎年のように行ってたよ。

コースではどんな蝶が見られるんですか?

―土田さん
そうだなぁ。季節にもよるけど7月のトレッキングの時期だと「ミヤマカラスアゲハ」や「スジボソヤマキチョウ」がよく飛んでいるかな。キレイでよく目立つんだ。
9月のトレッキングの時期だと標高1000m以上の場所でしか見られない貴重な「キベリタテハ」もいて、県外からも収集家が来ているのを見かけるね。
実は蝶はお天気にも関係していてね。晴れていないとあまり飛ばないんだ。あとは雨上がりのあと水たまりに群れで来ている蝶や、樹液を吸っている蝶を見たことあるかな?あれはミネラルを吸いに来ているんだよ。蝶は花の蜜を吸うイメージだけど、それだけだとミネラルが足りないんだ。だから雨水や樹液からミネラル分を補給しているんだよ。

「ミヤマカラスアゲハ」(左上・右:春は小さく鮮やか、夏になるとこんなに大きくなる)と「スジボソヤマキチョウ」(下)

お盆過ぎに見られる「キベリタテハ」。数も少なく、見られたらラッキー!

かわしまの歴史や伝説の話も聞けるとか?

―土田さん
かわしまには面白い歴史があってね。昔は蛇石のキャンプ場のあたりに木のお椀などをつくる木地師と呼ばれる職人が住みついていたんだ。
あとは木曽義仲の砦があったと言われていたり、山の神の言い伝えがあったりして、そういう話も大人には結構好評でね。あとは前回の御柱祭のときに諏訪大社の御柱にかわしまの木が選ばれたんだ。その話をすると諏訪方面から訪れた人に喜ばれるね。
(かわしまの歴史や伝説の話は今後の特集にて掲載予定)

今年はコロナ禍でなかなかツアーの開催ができなかったと思いますが、今後の予定は?

今年は7月・9月のツアーや紅葉祭りも中止になってしまったけれど、なんとか10月の紅葉の時期のトレッキングツアーはやりたいと思っていて、今メンバーで計画をしているところです。
今回は町内の方限定で広報する形になると思いますが、ぜひみなさんに参加してもらって、心と身体をリフレッシュしてもらえたらと思っています。

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