自然

自然を守り 作物を守り 暮らしを守る 川島区有害鳥獣捕獲委員会 委員長 根橋巻博さん

川島地区の山には、サル・イノシシ・タヌキ・キツネ・ニホンジカなど様々な野生動物がいます。野生動物と人間が遭遇する機会が増え、全国でも農業被害や人身事故が後を絶ちません。川島区有害鳥獣対策委員会の根橋巻博委員長と獣害対策支援員の根橋正美さんにお話を伺いました。

川島区有害鳥獣対策委員会とは

本日はよろしくお願いします。 委員会の成り立ちについてお聞きします。

川島区有害鳥獣対策委員会の歴史は古く、川島区が合併する前からありました。有害鳥獣捕獲サポート隊は、有害鳥獣駆除者の負担軽減などを目的に2年前に発足しました。以前は個人毎に活動していましたが7耕地から隊員を選出しサポート班と指導班を合わせて63名で、ワナの見回り・電気柵の点検・煙火による追い払い・捕獲獣の処分などをしています。勉強会、講習会もしながらね。サルの被害は本当に多くて。かやぶきの館がオープンした頃は、まだ可愛いもので「本日の猿目撃情報」など掲示してね。話題になっていたけれど、そのうち農作物を荒らすようになって、それでは済まなくなった。横川峡の奥にはサルの群れが4群ほどと言われていましたが、里まで降りてくるようになりました。

被害額が1年間で100万円近いですね。

平成23年から調査をはじめました。松茸の被害も本当に多くて。全体の3割ほどです。主にサルとイノシシの被害です。田んぼもサルは手を使い稲の中身を出してしまいます。イノシシは田んぼを転げまわるので、一度荒らされた田んぼは臭いがついてしまうので大変です。

行動を把握するためサルにGPS発信機を取り付けて放します

サル捕獲用大型檻は下飯沼沢と一ノ瀬にありますが、檻にかかったサルに発信機をつけて放しても、また帰ってきます。「餌はある。私は大丈夫」と頭がいいですよ。しかもサルの群れを仕切っているのは人間でいうと40歳くらいのメスのサルだそうです。オスのサルは威嚇して群れを守ります。たまに一匹で行動している離れザルがいますが、要注意です。このサルは若いオスで交配のため、群れから群れへ渡り歩いて餌のありかを覚え群れを連れてきてしまいます。一匹だからと安心せずに処分しなければなりません。こんな情報も研修会をしながらサポート隊は勉強しています。サポート班と指導班が協力して活動しています。他の鳥獣はカラスですかね。以前に300羽ほど捕獲したこともあります。くちばしが鋭くて頭が良いので残飯には来ないんですよ。

早朝サル用大型檻に入るサル達(2023.3月AM5:57)

猟友会さんと捕獲サポート隊

猟友会さんとの関係は

補猟従事者のお手伝いをするのが川島区捕獲サポート隊です。見回りをしながらワナにかかった動物を見つけたら、猟友会さんに処分をお願いするんです。穴を掘りそこに逝けます。門前と渡戸の2箇所にその処分場はあります。渡戸の穴は大きくて、3メートル四方くらいです。深さも3メートルありますよ。その穴に入れて脱臭と消毒のため、消石灰をかけます。

処分した動物は、食べますか。

イノシシは、たまに肉にしますが、やはり残骸が残るのは同じことなので。

野生動物の数は増えていますか。

令和3年頃だったかな。豚熱が流行った年は一時的に減ったけれど、結局2年くらい経つとまだ元に戻りますね。クマもいます。経ヶ岳にたくさんいますが、檻に入ったのを確認できたら辰野町に連絡します。その後、信州大学の先生や地域振興局の方が来て、お仕置きをして伊那の方の山に放すそうです。11月から2月までの狩猟期間は仕留めてもいいですが、それ以外の時期は捕殺できません。先日、新聞で見ましたが伊那の羽広のもろこし畑に出てきたクマはリピーターです。イヤリングのような印をつけて放しても、また同じクマがやって来るようです。お仕置きしても懲りないんですね。

電気柵の見回り点検

山は自然のままではない。手を入れていかなければ。

山の生態系についてのお考えをお聞かせください。

一見、山を見ると自然に見えるけれど自然ではないですよね。ほとんどが人工林です。一度手を入れたところはずっと入れ続けなくてはいけません。川島は松茸山が広くありますから、ある程度は荒れた山にはなりにくいです。それに松茸の時期は人が山に毎日入りますから、サルやイノシシも他の時期より出てきません。私が小学校の頃は結構な山の上に畑があって、人がしょっちゅう出入りしていたので、動物の被害もありませんでした。昭和40年代になって徐々に人が少なくなり養蚕も無くなり、野生動物が下に降りてくるようになった。昔みたいに薪を拾ったり、お蚕さんの桑の葉を採ったりしなくなったのでね。

とても大変な仕事です。有害鳥獣対策委員会の皆さんのご苦労のおかげです。

捕獲サポート隊事業をやって良かったと思うのは、少しでも有害鳥獣に関心を持っていただいたことですね。アンケートでも地域を守る意識が共有され、家族で協力できた。川島区全体で有害対策しているオーラが出ていて良かった。などの感想もいただきました。

獣道を探りながら罠を仕掛けます。罠のトリガー部(プレート・パイプ)が外れるとバネの力でワイヤーの輪がしまり、獲物の足をガッチリと捕えます。

ANIMAL MAP(アニマルマップ)とは

辰野町では、町内で捕獲されたサルにGPS発信機を装着し行動調査を行っています。お手持ちのパソコン又はスマートフォンで位置情報を確認できます。

川島のサルは人を襲わない

サルにナメられたら終わり!毅然と!

川島のサルは石を投げない

体の構造的に投げる事はできません

サルと遭遇したら威嚇する

一歩前に出て大きい声を出そう!
ID: inatatsuno@animalmap.jp password: mirudake

お話をお聞きして

誤った知識は野生動物や周りの環境にさまざまな影響を与えます。日本中の他の動物相手の観光地も見えない工夫で努力をされているのだと思います。人間と野生動物とがよりよい関係を築いていくために正しい方法で動物と向き合うのは大切なことです。(インタビュー=伊藤 優 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)

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