かやぶきの館

ずっと海の近くで生活していたのに標高800m超の里山に移住したワケ かやぶきの館 村上康介さん

 愛知県出身の私は、海の近くから里山に住処を変えた。大学時代に休学して、長野県辰野町で町第1号となる、地域おこし協力隊に着任。離任後、大学に復学し、卒業後は愛知県の養鶏場に就職。2年後に、ご縁がつながり、再び辰野町に戻る。辰野町のかやぶきの館に就職。ゲストハウスに長期滞在をするという形で生活している。

そもそも何故地域おこし協力隊に??長野県辰野町との出逢い

大学の、とある講義の一つに、大学の外へ飛び出し学生主体で地域の中で事を起こすものがありました。 いくつかのプロジェクトに分かれて行うものでした。その中で、長野県辰野町川島区の活性化に関わるプロジェクトに参画したんです。

とある地元のおいちゃんとの出逢い

そのプロジェクトの中では、地元のお祭りを一緒に盛り上げたり、移住者を増やすためにはどうしたら良いのかなどを地元の人たちと考えていました。プロジェクトに入り始め1年程が経った時、地元のおいちゃんから「この前来てくれた兄ちゃんだよね?」と言われたんです。はっ!顔を覚えてもらった!…ただここまでで1年。それもそのはず。大学は愛知県の南も南。半島の先の方。高速を使っても片道3時間程度はかかる。お金のない大学生には頻繁に長野県に行くことが出来なかったのです。

決意

その言葉を聞いた時、「嬉しい」と「悔しい」が入り混じった感情が沸き上がりました。よそ者が地域活性化に関わるにあたって、顔を覚えてもらって、初めてスタート地点に立てると思っていたんです。ただ、このプロジェクトは、大学の講義の中にあるもの。自分には、関わる期限がある。そう思ったときに、ふと、「このプロジェクトは、意味があるものなのか?」と疑問が沸きました。何せ、地域活性化が目的ですから。そこで、考えました!この地に住んでみたら、意味がある活動だったのか、他にも必要な活動があるのか、分かるかもしれない!

地域おこし協力隊との出逢い

これを担当教授や、協力してくれる大人に話してみたら、地域おこし協力隊を紹介してくれた。しかし、辰野町では、その当時地域おこし協力隊を導入していなかったのです。そこで、川島区のキーパーソンとなる人たちへ、提案をし、その人たちから町役場へ話を通してもらったのです。そうして、地域おこし協力隊の制度を導入&第1号として着任することになりました。大学を休学して活動をしていたので、1年で退任し、大学に復学。そのまま愛知県で就職。ところがどっこい、ご縁が繋がり再び移住してきました。

2度目の移住 移住の経緯

協力隊をやっていた当時、若い人や移住者が少なく、地元のおいちゃんや、畑をやっているおかあさんが話し相手でした。もちろん、協力隊も私一人でした。ところが、辰野町から離れている2 年の間に、協力隊も増え、移住者も増え、カフェやゲストハウスなどを始める人も。町が盛り上がってきているのを感じたんです。その盛り上げる中に、自分もそこに居たいと思うようになり、2 度目の移住を決めました。

移住後の仕事

今回も協力隊!というわけにもいかないので、仕事を探しました。ところが何と、協力隊時代にお世話になっていた人が、「かやぶきの館」を経営することになったんだけど、来ない?と言ってくれたんです。この、かやぶきの館は、辰野町の川島区にある旅館です。そうです。大学時代や協力隊時代に生活し、大変お世話になった地区です。そんなご縁もあり、かやぶきの館で働くこととなりました。

移住後の住処

仕事は決まった。じゃあ、住む場所は?というと…流石、田舎の中の田舎のため、ほとんど一軒家しかない。しかも、すぐ住める家は少ない。水回りなどの修繕が必要になってくる。と思っていたら、救世主が!川島区でゲストハウスの管理人をしている人と出逢ったんです。そして、もし住む所がなければ、ウチにどうぞ!と言ってくれ、そのゲストハウスに長期滞在という形で住まうことに。世にも珍しい、ゲストハウスに住んでいる人になったんです。いつの間にか4年半が経ちます。

ゲストハウスアトリエ和音にて

再移住後の生活

丁寧な手作り、手仕事をする生活をしています。友人に貰った夕顔を干瓢にしたり、国産檸檬の塩漬け、諏訪の魚屋さんで海の魚を買い、自分で捌き、長野県の野菜と合わせた料理をし、長野県の地酒とのマリアージュを楽しんだり…。父は釣りが好きで、実家ではいつも新鮮な魚がある生活でした。移住してきても魚のある生活を送っていて、魚の干物やイカの塩辛、甘エビの塩辛なども作っています。最近は旬の野菜をジェノベーゼにしてイカや貝類にからめるのにはまっています。

地産地消は最高級の贅沢

協力隊を退任し、愛知県へ戻るとき、小野酒造店の夜明け前霧訪を買って帰りました。その当時の霧訪は、パイナップルの香りがするお酒でした。川島で飲んでいた時と、愛知で飲んだ印象が違いすぎて、これは何だろう?と…。標高が約800m下がるので、室内の温度や湿度なども相まって、味わいが変わることもあるだろうと感じています。すなわち、その土地のものをその土地で食すことが、最もおいしく幸福度も高まると思っています。どんな高級料理よりも、地元食材と地酒の組み合わせが最高級の贅沢だと感じます。

思い描くわたしの未来図

学生のころから夢見ていたのは、生産者と消費者とを繋ぐこと。辰野町にも素敵な生産者様がたくさんいますが、日本福祉大学のある知多半島にも素敵な生産者様がたくさんいて、その方々との出逢いから考えていました。知多半島は南に行けば行くほど豊かな自然が広がります。本当においしい牛肉を追及している畜産農家、小豆島と同じ気候にあることからオリーブ街道を作っている方、地元の休耕田でつくった飼料米で鶏を育てる養鶏農家など素敵な方々に出会ってきたからこそ、その愛ある生産物を消費者に理解してもらい広めることを夢見ていました。現在の開花させたい夢は、生涯かかると思うけど…。食空間のトータルコーディネートがしたい。「食のおいしさ」は、味覚だけでなく、色、香り、艶、コク、温度、光、器、物語、人、場所…様々なことが関わって「おいしさ」ができあがります。「食べることは、身体をつくること」と言われるけど食べる意味は生きるためだけでない。食べることで幸福度が上がります。食事は誰もが毎日得られる小さな幸せだと思っています。毎日の食事が幸せな生活こそが最も幸せな人生だと感じています。美味しい食事と、美味しいお酒を、楽しい仲間と囲める空間が続いていくといいな。

かやぶきの館での手仕事

敷地内にある野草を使ったお茶づくり、町内産のお米や野菜と麹を使った甘酒仕込みなど、かやぶきの館でも丁寧な手仕事をしています。敷地内には、季節ごとに様々な野草があります。春は、桜や蓬、フキノトウ、三つ葉。夏はフキの葉や杉菜、ドクダミ、アケビの葉、葛の葉。秋はクマザサや紅葉。その季節に野草を採取し、乾燥、焙煎しています。それぞれに香りや味わいが違い、山の恵みを感じます。

かやぶき茶茶茶

かやぶき冷凍甘酒

(文責=村上康介さん 編集・レイアウト=山崎里枝)

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