文化

耕地をあげて神楽と神楽歌舞伎を伝え続ける 上横川神社神楽保存会の皆さん

毎年10月の第2日曜日、川島門前耕地の上横川神社の境内に笛や太鼓の音が響き、獅子が舞って神楽が奉納されます。門前の獅子舞とも呼ばれるこの神楽は、今から270年ほど前から始まったと言われ、その起こりは悪魔払いの神事だったそうです。今回は上横川神社神楽保存会の皆さんにお話を伺いました。

神楽は日本で最も数が多い民俗芸能といわれています

門前神楽保存会の皆さん本日はよろしくお願いします

この神楽は大変歴史があります。昔、横川の谷に疫病が流行して、干ばつが起こったことを神のたたりと考えた村人が、伊勢神宮に代参をたて、神にお願いをしました。2人の神楽師(又右衛門と七之丞)が遣わされて災いを鎮めて神楽を伝承したのが起源と言われています。門前耕地をあげて神楽を伝えていこうと、昭和54年に保存会を結成しました。耕地全員が保存会員です。その時に法被も作りました。

かやぶきの館の竣工式から今日(こんにち)まで長らく奉納して頂き感謝致します

新年から地元の皆さんが、神楽を見に来られるのはとても良いことですね。獅子に頭を噛んでもらう理由は、その人についた邪気を食べてくれて、子供の場合は厄除けの効果もあり、学力向上や無病息災などご利益があると言われているそうですよ。

健やかに大きくなあれ

この獅子は振袖を着ていますね

それは雌獅子だからです。女形として女性的なしなやかさを表現するのは中々技術が必要ですね。初代の着物は古くなり知り合いの方に口利いてもらい購入しました。その後平成13年「国のふるさと文化再興事業」で獅子頭を始め、着物や太鼓他を購入整備することができました。今は2組の着物を大切に手入れしています。

三村裕昭さん

獅子も、雄に比べるとそんなに厳つい獅子ではないですけれど、何度か修理に出して手入れをしてきました。平成11年2月24日、町無形民俗文化財に指定されました。上横川神社には、当初に使われた獅子頭と伝えられるものが伝存しています。獅子舞が各戸を回る際に、その頭を納めたという神輿状の小社があって「宝蔵」「御神楽殿」と呼ばれています。諏訪大社の宮大工「花岡源内 作」であろうと伝わっていますね。

神楽歌舞伎[梅川忠兵衛]

梅川忠兵衛についてお伺いしたいのですが

さて賑々しくご来場の皆さまに一言口上申し上げます。と、今から320年ほど前の昔、大坂は竹本座において上演された神楽歌舞伎です。作者は近松門左衛門です。神楽と共に上横川神社に保存されていて、折にふれ上演しています。

この書物によれば、辰野町には3つの形式の獅子神楽が残っているという。(採物神楽・湯立神楽・獅子神楽)「北大出 神明神社」「押野 獅子舞」「上辰野 三輪神社」そして「門前 獅子舞」の4ヶ所で伝承されている

梅川忠兵衛の物語
江戸時代の情話の主人公。実説は飛脚宿亀屋の主人忠兵衛が大坂新町の遊女梅川になじみ身請けの金に困って為替の金を横領し処刑されたというもの。事件の詳細は不明であるが宝永6(1709)年のことと推定される。近松門左衛門作の浄瑠璃「冥途の飛脚」(1711年3月初演)やその改作の歌舞伎「恋飛脚大和往来」(1796年2月初演)はこの事件をもとにしている。友人八右衛門との口論から逆上した忠兵衛が思わず為替金の封印を切ってしまういわゆる「封印切」の段や忠兵衛が故郷の大和新口村に梅川と落ちのび父孫右衛門によそながら別れを告げる「新1口村」の段が有名。

昔の青年会の活気が懐かしいですね

青年会に入った時のお話を聞かせてください

私(三村裕昭さん)は昭和29年頃、青年会に入りました。青年会も活気があって人数も多く、28歳くらいで卒業するのが決まりだったが、なんとしても神楽を後世に伝えていかなければと、やめてからも練習には顔を出していたなあ。当時、門前の春祭りは4月16日と17日の2日間行われました。上横川神社の神主様は三輪神社から来ていてね、青年会は社務所に泊まり込んでね。19歳の時、御柱だったかな、梅川忠兵衛を一ノ瀬隆志さんと踊ったよ。70戸もあったからね。それは賑やかだったもんだよ。

中山信郎さん

様々な機会で神楽・神楽歌舞伎を上演されているのですね

何かイベントがあるたびにやっています。ほたる祭りに上演したこともあります。辰野中学校体育館のこけら落としや、上伊那神社総代会に頼まれて上演したこともあります。この時は拍手喝采だったね。なかなか歌舞伎調のセリフ回しなので難しいです。近松門左衛門は江戸時代に脚本を書いていたんですよね。忠兵衛は、自分でセリフを言うけれど、梅川は自分では言えないので、脇の人が動作に合わせて梅川のセリフを言うわけです。

飯島一雄さん

保存会の中心になって活動しているメンバーは約20人。20代から80歳を超えた人までと幅広く地区の生活改善センターを拠点に稽古などをしています。神楽は年間7〜8回は上演しています

上横川神社神楽保存会の皆さん

上横川神社

お話をお聞きして

地域に根付き神様を敬愛し、神楽・神楽歌舞伎を守り伝承していただいてるありがたさ、改めて感謝の気持ちです。貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

(インタビュー=伊藤 優 撮影・編集・デザイン=山崎里枝)

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